black diary

にゃーん

『忌まわしき花嫁』考察

 BBCドラマSHERLOCKのシーズン3からシーズン4の間に位置する『忌まわしき花嫁』についての考察。続くかも。

 

 ホームズは飛び降りることにより目覚めようとする。「ハードディスクのウイルス」を倒し、今度こそワトソンに背中を見守られながら飛び降りたラストは問題の解決を提示したかにみえる。しかし物語中、マインドパレスでは意識の深度と物理的な昇降はしばしば印象的に関連付けられている。(例:撃たれたホームズが意識を取り戻そうと這い登る階段(または221bへの階段)、ミルヴァートンがマインドパレスの入り口で下降する螺旋階段(s3e3)、「古い事件だ。深みへ行かねばならない。」、「miss me?」のタグを見たホームズが階段を降り歪む視界、地下牢を出て階段を上り221bに現れるモリアーティー(『花嫁』))お前は自身が意図していたより深いところにいるのだと『花嫁』でマイクロフトは警告する。しかしむしろホームズは、自身の最深部へと沈み込んでしまったモリアーティーを追い、自ら滝壺の下へ下へと落ちていってしまった。
 また、モリアーティーを指して繰り返し使われる表現である「ハードディスクのウイルス」であるが、原作の「筆者」たるワトソンの言葉つまりボヘミアの醜聞の冒頭部分を借りたマイクロフトに言わせればモリアーティーは「レンズのヒビ」でもある。頻度は少ないが、原作の言葉を借りたこちらの表現の方が重要な暗喩だ。原作において「レンズのヒビ」とは精密な思考する機械であるホームズにとって致命傷にもなりうる忌避すべき「あらゆる激情、特に愛(『ボヘミアの醜聞』)」を指している。ホームズのpressure point、「あらゆる激情、特に愛」。マインドパレスにおいてモリアーティーがこれを表象することになったとは皮肉だ。そして「レンズのヒビ」は、よりによってワトソンにより滝壺へと突き落とされたのだった。